大成建設株式会社


大成建設が語るBIM導入から20年の軌跡。


設計現場を支え続ける「協振技建」との共創が生んだ、実務と人材育成の進化とは?

(左から協振技建 情報システム部 田口 営業部 豊田/大成建設 設計本部 金子様 沢崎様)

1993年に入社以来、設備設計から情報管理・BIM推進まで幅広くキャリアを重ねてきた大成建設株式会社 設計本部 デジタル・ディテール・デザイン部BIM推進室長の金子様と、CAD・BIMの変遷を40年以上にわたって見届けてきた設計本部 デジタル・ディテール・デザイン部BIM推進室 沢崎様。本インタビューでは、BIM推進室発足の背景、ARCADE NEO導入の経緯、協振技建との20年に及ぶ共同開発の歩み、そして今後の展望についてお話を伺いました。

■この記事のポイント

・大成建設では設計部門内に「BIM推進室」を配置し、設計者がBIMも扱う体制を構築

・CAD/BIMの専門部署が図面の整合性や設計生産性を支えることで、設計者が本来業務に集中できる環境を実現

・AutoCAD版「Brain Gear Supra」からARES Commander版「ARCADE NEO」まで、20年以上にわたり協振技建と改善を積み上げた共同開発の歴史

・若手育成の観点から“最初に触れるCADはARES Commander”という方針を採用し、設計基盤の標準化と定着を促進

・継続利用の決め手は機能だけでなく「協振技建の現場の声に寄り添い、改善し続ける姿勢」による強固なパートナーシップ

 

1. 設備設計からBIM推進へ――キャリアの歩みと新たな挑戦

 

関根:本日はインタビューの機会をありがとうございます。早速ですが、今までのキャリアと現在の担当業務についてお話しいただけますでしょうか。

金子様(大成建設):1993年に入社しました。3つの建築部門(建築設計・構造設計・設備設計)のうち、私は設備設計部門に所属しました。最初はマンションの設備設計を担当していましたね。Windows 95が出た頃は様々な部署でコンピュータ関連の仕事をいくつか経験し、設備設計に戻りました。その後は、CAD関連の部署に在籍した後に研究開発を担う設備計画室に異動し、さまざまな技術開発を行いました。もう定年かなと思っていたところ、「BIMの部署を立ち上げるから行ってくれ」と。「いいですよ」と軽い気持ちで引き受けたら、室長でした(笑)。

BIM部署ではソフトの予算管理などを主に担当しています。「ARCADE NEO」についても、上村と一緒にユーザー対応や社内問い合わせの窓口を担当していました。

関根:ユーザーというのは社内の方々ですか?

金子様(大成建設):はい。私が入社した当時に配属された「設備設計部」という部署ですね。現在、全国で約250名在籍しています。私たちは、その部署を支援する立場にあり、「BIM推進室」や「設備計画室」もその支援部署になります。

関根:BIM推進室の立ち上げは、いつ頃だったのでしょうか?

金子様(大成建設):部署が発足したのは2021年の12月です。私が実際に打診を受けたのは2021年の8月頃でしたね。当時、既に建築と構造にはそれぞれBIM推進室があったんです。設備にもBIM推進室が立ち上がることになり、このタイミングで「建築・構造・設備」の3分野すべてにBIM推進室が揃いました。

関根:他のゼネコン様にも、御社のようにBIM推進室のような部署はあるのでしょうか?

金子様(大成建設):設計部門内にあるかどうかは微妙ですね。スーパーゼネコン5社の中で、設計部門にBIM専用の部署を持っているのは、当社だけかもしれません。弊社は「設計者がBIMもやりなさい」という考え方なんです。ただ、現状は我々のような支援部署があるので設計者自身がBIMを直接やる必要はありません。その分設計者が仕事数をこなせるような体制にしています。

関根:続いて沢崎様にお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。

沢崎様(大成建設):私は1979年に入社し、当初は設備設計の部署に配属されました。設備設計部門は電気と機械に分かれており、私は電気に配属されました。専門は電気では無い為、仕事を通じて電気と設備の両方を学んでいったという感じですね。

その後もしばらくは設備設計の部署に所属していたのですが、今から約30年前にCADを扱う部署へ異動になりました。金子が話したくらいの時期以降はCADやBIMといったソフトがメインになってくるのですが、当時はまだ「BIM」という言葉はなく、図面をどう作成するかという視点でCADを使う時代でした。その後、時代とともにBIMをどう活用していくかという部署に業務内容が変わってきました。部署名や業務内容も少しずつ変化してきましたが、基本的には一貫してその流れの中で業務に携わっています。

関根:その変遷を長く見届けてこられたのですね。

沢崎様(大成建設):はい、おそらくこの部署の中では一番長く在籍しているかもしれません。そういった流れの変化を見つつ、現在に至っています。

 

2. ARCADE NEO誕生の裏側――協振技建との共創ストーリー

関根:御社での「ARCADE NEO」の活用状況について教えていただけますか?

金子様(大成建設):弊社が最初に協振技建から導入した建築設備CADは「Brain Gear Supra」で、AutoCAD上で動作するものとして提供されました。AutoCADはアメリカのAutodesk社の製品で、当時皆さんこぞって使用していました。しかし、「3バージョン前のものは使えません」や「サブスクリプションにより倍額になります」など、海外ソフトにありがちな条件変更や価格変動が多く…そういった背景から、当社としてもGraebert社の「ARES Commander」への移行を推奨するようになりました。

そこで協振技建さんにご相談し、「AutoCAD版Brain Gear Supra」をベースに、ARES Commander版として再開発していただけないかというプロジェクトを立ち上げました。完成したのがちょうど3年前で、そこから現在のARES Commander版「ARCADE NEO」の運用が新たに始まりました。

ここ数年の新卒採用で人材が増えていますが、設備設計部門は建築専攻だけでなく、機械系、電気・電子系、建築環境系など多様な分野の出身者がいます。そのため、学生時代にCADを使った経験がない人も多い。なので、あえて「CAD=ARES Commander」という環境下の元、AutoCADを知らない状態でARES Commanderを使い始めてもらうようにしています。現在「ARCADE NEO」を使用しているのは若手中心ですね。

関根:田口さん(協振技建)が大成建設様とのお付き合いを始めた頃の印象や、導入初期のご苦労など、何か思い出に残っていることはありますか?

田口(協振技建):実は私が関わり始めたのは、AutoCADバージョン2005版の「Brain Gear Supra」からで、途中から参加させて頂いたんです。大成建設様がライセンスを購入してくださったタイミングで、セットアップのためにお伺いし、その際に初めて金子様とお会いしました。以降大成建設様と会議を重ね、改善のご要望もたくさんいただきながら、バグの修正や機能の改善を何度も進めてきました。正直最初の頃は苦労した時期もありましたが、徐々に稼働率も安定していきました。何かトラブルが発生すればすぐに飛んで行って、現象を確認しながら対応していた事を思い出します。

 

3. “ユーザーに寄り添う設計”が支持される理由

関根:最初「Brain Gear Supra」を採用頂いたきっかけというものは?

金子様(大成建設):当初、設備がAutoCADを使っていなかったため、建築・構造との連携で「なぜ設備はAutoCADを使わないのか?」という声も社内で上がっていたように思います。

当時は図面の受け渡しのたびにファイル変換が必要で、しかもその変換に非常に時間がかかっていました。単純なデータなら問題ないのですが、AutoCADは作成者によってデータ構成が異なり、複雑な図面は変換後に膨大なデータ量となってしまい、設備側では扱えないといったトラブルもありましたね。それでDWGで統一したいと言うことで。「Brain Gear Supra」そして「ARCADE NEO」は、御社の担当者様と弊社が苦労を重ねて創り上げてきたシステムです。そこから現在に至るまで、ご指摘やご要望を数多く反映しながら機能改善を重ねてきました。お陰様でご利用状況も着実に伸びてきています。

関根:まるで共同開発のようなイメージですね。そうした時代を経て、20年の関係が築かれてきたんですね。「Brain Gear Supra」と「ARCADE NEO」が現在まで継続して使われている背景にはソフトとしての機能的な価値もあると思いますが、「これがあるから使い続けている」「これが他に代えがたいポイントだ」という点があれば、ぜひ教えていただけますか。

金子様(大成建設):「Brain Gear Supra」と「ARCADE NEO」はユーザーに寄り添った設計なんです。まず “すっぴん状態” のAutoCADだと属性情報が一切ありません。2次元だと線一本で表現されるので、例えば設備配管も給水なのか排水なのか分からない。そこに斜線が一本入ることで「これは給水」、Dと書いて「これはドレイン」と分かるようになります。

AutoCADですと、そういった作業も全て自分でトリミングやテキストデータを入れなければなりません。しかし「Brain Gear Supra」と「ARCADE NEO」では、たとえば「これは給水管」と指定すれば、それに対応した線種や記号が自動的に反映されるんです。

現在では他のCADソフトも同様の機能を持つものが出てきていますが、当時はそこまで細やかに対応できるものは他にありませんでした。それが、前任の担当者が最初「Brain Gear Supra」を選んだきっかけでもありますし、前任者と御社が本当に苦労して作り上げてくれた結果だと思っています。

沢崎様(大成建設):当時、建築設備CADとしての歴史が長い他社製品を使い込んでいた人が多かったんです。使い勝手をイメージしながらも、新たなCAD用ソフトを開発するのは協振技建さんも相当苦労されたかと思います。当時はバージョンアップで不具合が出て協力事務所さんからクレームが入ることも実際にありました。ただ、当時から協振技建さんがこちらの要望や問い合わせにもすぐ対応してくださるので、非常に助かっています。

 

4. 定例会議から生まれる現場改善の連鎖

金子様(大成建設):以前は2か月に一度、協振技建さんとミーティングの場を設けていました。「これが出来ません」「あれが上手くいきません」といった問い合わせを協振さんと共有していました。そんな場を設けていたのが2020年頃までですね。

沢崎様(大成建設):当時は私もその会に短期間ですが参加していて、「こうしてほしい」「あれを改善して欲しい」といった要望を直接伝えていました。

関根:そのように直接ご要望や課題を伺える場があるというのは、開発側としても大きな価値になりますね。

金子様(大成建設):コロナ禍の影響でオンライン会議ツールを使ったやり取りも増えましたが、やはり対面でお会いすることが一番コミュニケーションを取りやすいと感じますね。

関根:これまで定期的に話し合いの場を持たれてきたんですね。現在そのミーティングが無くなったのも、それだけ「Brain Gear Supra」と「ARCADE NEO」が安定して運用されている証かと思います。

沢崎様(大成建設):そうですね。現在は私がサポートの窓口をしており、私のところで解決できない内容については、田口さん(協振技建)に直接問い合わせをして解決しています。

金子様(大成建設):例えば「ARCADENEO」の場合、ベースとなっているARES Commanderが原因なのか、「ARCADE NEO」側なのか、判断が難しいケースもあります。ARES Commanderについては、別部署に詳しい担当者がいるのでそちら側で確認することができますが、「ARCADE NEO」は設備設計の中でしか使っていないソフトの為、わからない場合は協振技建さんに直接聞くようにしています。

 

5. 未来への期待――“BIMには手を出さないで(笑)”に込めた想い

関根:最後に、今後の「協振技建」や「ARCADE NEO」に対して、何かご要望や期待されることがあればぜひお聞かせください。

金子様:お願いしたいのは、ややこしくなるので「BIMには手を出さないでください」ということですかね(笑)

豊田(協振技建):弊社としても、AutoCAD環境もARES Commander環境も両方サポートできるように備えております。建築設備CAD業界全体を見ても、CADとBIMをお客様が使い分けをされるような時代に入ったのだなと感じています。

自社の都合ではなく、あくまで「お客様のDWG環境を快適に保つための提案をする」という方針でお話しをさせて頂いております。開発チームにとっては苦労も多いですが、これからも全力で取り組んでまいります。

関根:本日はありがとうございました。

 

インタビュアー  N.Y.CAFT株式会社 関根 優

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